性感染症のイメージ画像

主に性行為によって感染する病気のことを総称して性感染症(STD:Sexually Transmitted Disease)と言います。感染者の粘膜や皮膚と接触することで感染しますが、男女間だけでなく、同性間でも感染します。

STDの予防にあたってはコンドームが有効とされています。もともとコンドームは避妊具として使用されているものですが、感染者の病原体が含まれた精液や膣分泌液の粘膜への侵入を防ぐ効果もあるとされています。それでも絶対に性感染症に感染しないということはありませんが、感染リスクは下がります。なお性行為の際に毎回、コンドームを使用している場合でも、性病検査は定期的に受けられるようにしてください。

主な性感染症

梅毒

梅毒は、細菌の一種である梅毒トレポネーマに感染することで発症します。これは、主に性行為中に口内や膣などの粘膜から同菌が侵入することで感染、発症していきます。

発症までの潜伏期間は約1ヵ月です。初期症状としては、感染した部位(性器、口 等)で痛みが伴わない、できものやしこりが現れます(第1期)。この場合、放置をしていても数週間が過ぎるとできもの等は消えていきます。

なお皮膚症状が消えたとしても細菌は残り続けます。その後、感染から3ヵ月程度が過ぎると全身に同菌が広がるなどして、発疹がみられるようになります。発疹は足の裏や手のひらにも現れますが、治療をしなかったとしても数週間~数ヵ月で症状は消失します(第2期)。ちなみに梅毒患者様の多くは、この時点で症状に気づいて治療をするようになります。

また第2期でこれといった治療をしなくても、その後は数年~10数年程度は自覚症状が出ません。ただ、それを続けるとゴムみたいな感触の腫瘤が全身に発生し(第3期)、さらに進行すれば、大動脈瘤や慢性髄膜炎、神経障害などの病気がみられることもあります(第4期)。

淋菌感染症

原因菌は淋菌で、膣性交やその類似行為によって感染します。発症までの潜伏期間は2~7日で、性別によって症状が異なるのも特徴です。

男性の場合、尿道にかゆみや膿、排尿時痛の症状がみられるほか、発熱も現れます。さらに病状を悪化させると、尿道狭窄、精巣上体炎等になることもあります。なお女性に関しては、自覚症状が出にくい、あっても軽度なので感染源になりやすいこともあります。症状が出る場合は、おりものの色が緑黄色、おりものの量が多い、尿道から膿が排出されるなどです。上行感染が起きると骨盤内炎症性疾患(PID)や不妊の原因となることもあります。

性器クラミジア感染症

数ある性感染症の中でも日本人の感染者数が最も多いとされる病気です。クラミジア・トラコマチスと呼ばれる細菌に性行為等によって感染し、約1~3週間の潜伏期間が経過した後、発症します。

男女ともに半分程度の患者様は自覚症状が出にくいと言われています。症状が出る場合、男性では、尿道から膿が出る、排尿時に痛み、尿道に違和感や痛みなどがみられます。女性であれば、下腹部痛、おりもの増量、不正出血、性交痛などが現れます。感染の状態を放置すると不妊の原因になるほか、感染をきたせば骨盤内炎症性疾患(PID)などを引き起こすこともあります。

B型ウイルス性肝炎

肝臓に炎症が起きている状態を肝炎と言います。原因としては、ウイルス、薬剤、自己免疫、アルコールなど様々あるわけですが、一口にウイルスと言いましてもA~Eまで5つの型があります。その中のB型肝炎ウイルス(HBV)に感染し、肝炎を発症している状態がB型ウイルス性肝炎です。

このHBVは、血液、精液、膣分泌液等に含まれているので、性行為も感染経路のひとつとされています。感染後は、1~6ヵ月の潜伏期間を経てから発症するようになります(急性B型肝炎の場合)。

ちなみに性行為によって感染するB型ウイルス性肝炎のほとんどのケースが急性とされています。主な症状ですが、倦怠感、易疲労感、食欲低下などがみられた後、嘔吐、腹痛、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)などが現れます。多くの場合、安静に過ごすことで治るようになりますが、まれに劇症肝炎を発症してしまうこともあります。

HIV感染症

Human Immunodeficiency Virusの略称がHIVです。これは、ヒト免疫不全ウイルスとも呼ばれます。このHIVは、血液、精液、膣分泌液に含まれやすいとされています。そのため、性行為をはじめ、母子感染、注射器を使い回すなどすることで、粘膜や傷口などから同ウイルスが侵入し、感染していきます。ちなみに咳やくしゃみなどで、感染することはないです。

よくみられる症状ですが、2~4週間ほどの潜伏期間を経て、インフルエンザのような症状(発熱、喉が痛い、関節や筋肉の痛み、頭痛 等)のほか、発疹(小さく赤い発疹)などもみられます。それでも数週間後には、症状も含め何もなかったかのように消えていきます。それからは、自覚症状がみられない状態が数年~10数年続くことになります(無症候期)。

ただその間もHIVは増殖し続け、体内の免疫細胞は徐々に減少していくなどして免疫機能は低下していきます。病状がさらに進行すると、健康体では何でもないとされる病原体にも感染して発症するようになります(日和見感染)。また悪性腫瘍もみられやすいです。これらの症状が現れているとエイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)ということになります。

尖圭コンジローマ

性交もしくは類似する行為によって、皮膚あるいは粘膜の小さな傷からヒトパピローマウイルス(HPV:主に6・11型)が侵入して感染することで、性器や肛門の周囲に鶏冠やカリフラワーの形に似たイボが発生することがあります。この状態が尖圭コンジローマです。

感染から発症までは、3週間~8ヵ月(平均は3ヵ月程度)程度の潜伏期間を経るとされ、自覚症状が出ないこともありますが、人によっては痛みやかゆみがみられることもあります。また外陰部にしこりがみられるほか、女性ではおりものが増量するようになります。

先にも述べたように自覚症状が現れにくい、もしくは軽度です。そのため放置し続ける可能性もありますが、そのような状態になれば不妊症の原因になることもありますので注意が必要です。